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獣医師症例レポート「高分化型リンパ腫のフェレット」を追加

高分化型リンパ腫のフェレットに

フアイア抽出「糖鎖TPG-1」を与えた一例

症例提供:斎藤 瑞穂 先生 牛浜ペットクリニック

症例について

5歳8ヶ月/避妊済み/フェレット/800g
既往歴なし。臨床症状なし、一般状態良好。

経過と結果

2024年2月26日 健診時、腹部触診にて上腹部に腫瘤病変が触知されたため血液検査、X線検査、腹部超音波検査実施。
血液検査において貧血(PCV35.0%)、肝酵素軽度上昇(ALT311U/L)を認め、X線検査においては特異所見は認められず、超音波検査においては肝臓に混合エコー原性の腫瘤病変、肝嚢胞を認めました。肝臓腫瘤の細胞診検査結果は高分化型リンパ腫との診断でしたが、フェレットとしては高齢であったため積極的な治療は実施せずプレドニゾロン(0.8mg/kg 1日1回)の内服にて経過観察としました。
第60病日、血液検査、腹部超音波検査実施。肝臓腫瘤の明らかな悪化は認められませんでしたが、貧血 の悪化(PCV30.0%)、肝酵素上昇(ALT 555U/L)が認められました。
デキストラン鉄(10mg/kg 筋肉内投与)、ダルベポエチンアルファ(1.5μg/kg 皮下投与)、内服においてはプレドニゾロン増量(1mg/kg 1日1回)、肝庇護薬の内服を追加しました。その後は内服薬のみ継続とし、貧血の改善は認められましたが肝酵素が高値であることは変わらず、筋肉量の低下、徐々に活動性
の低下が認められたため、第133病日、プレドニゾロン、肝庇護薬の内服に加え動物用フアイア製品(0.03g 1日1回:付属のスプーン1杯を15分包し1回1包投与)の投与を開始し経過観察としました。肝門部であったため外科適応ではないと判断したことと、6歳近い年齢でありフェレット ととしては高齢で
あったため積極的な化学療法は負担が大きいと判断しフアイア製品を試してみることとなりました。嗜好性に関しても問題なく投薬できたため、第197病日、継続している内服のうちフアイア製品の投与量を増量(0.05g 1日1回:付属のスプーン1杯を10分包し1回1包投与)しました。
第394病日、一般状態良好、体重の減少もなく維持。経過の確認として血液検査、 超音波検査実施。貧 血は認められずPCV43.4%、肝酵素の上昇(ALT 627U/L、AST 162U/L)は認められますがリンパ腫であること、加齢性変化を考慮すると明らかな悪化はないと考えられます。また超音波検査においても肝臓腫瘤の悪化は認められませんでした。
現在、肝臓におけるリンパ腫が認められてから13ヶ月経ちますが、貧血の再発、肝臓腫瘤の明らかな増大、肝機能の悪化、リンパ腫の進行は認められず、全身状態は良好で維持できています。

考察と感想

フェレットにおけるリンパ腫は造血器系腫瘍の中で最も発生率が高い疾患であり、病態や治療反応、予後に関しても様々です。
犬猫同様に寛解を目指して治療をするのですが、よい状態を維持することが難しいのが現状です。本症例においてはリンパ腫との診断が出てから長期にわたり化学療法を実施することなく内服のみで良好な経過をたどり、プレドニゾロンの投薬量も1mg/kg 1日1回と抗炎症量から増量することなく、プレドニゾロン投薬による副作用を認めることなく良好な状態を維持できています。フアイア糖鎖TPG-1の免疫調整効果、抗腫瘍効果がリンパ腫の進行を抑制する助けとなっている可能性があると考えられました。副作用がないこと、嗜好性に関しても問題なく投薬できたことから今後もフェレットにおける様々な疾患に対して積極的に使用していきたいと思います。

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