獣医師症例レポート「難治性の慢性腸症」を追加
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- folder_open お知らせ
もくじ
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症例について
10歳10ヶ月/去勢済み/フレンチブルドック/10kg 2023年1月より軟便にて他院で治療を受けていました。ブチルスコポラミン・サラゾスルファピリジン・カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム・サイリウムを6か月間内服するも改善せず、当院にセカンドオピニオンを求め受診されました。元気食欲はあり、一般状態も良好でした。
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経過と結果
2023年6月当院初診時超音波検査にて十二指腸領域に炎症を疑わせる十二指腸壁の肥厚と一部コルゲートサインも認められ、さらに小腸壁の肥厚も認められました。難治性であり超音波検査にて異常を疑わせる部位が認められたので、内視鏡による消化管粘膜の組織生検及び病理組織学的検査を飼い主に提案したところ、今後の事を考えると検査して病気を明らかにしたいとの希望で、第7病日に実施しました。病理組織診断は、下記の結果でした。
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- 胃: リンパ球形質細胞性胃炎、軽度の水腫を伴う
- 十二指腸 : リンパ球形質細胞性腸炎 軽度の絨毛リンパ管の拡張を伴う
- 大腸: 著変認めず
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▼診断書の画像
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病理組織診断を踏まえてプレドニゾロン(1mg /kg)1日一回の投与と犬猫用フアイア製品(付属のスプーン2杯)1日一回を投与したところ第40病日に軟便が改善。プレドニゾロンを(0.5mg/kg)1日一回に変更して犬猫用フアイア製品も(付属のスプーン1杯)減量することができた。さらに70病日、便の性状は正常に維持され、プレドニゾロンを(0.25mg/kg)1日一回に減量して犬猫用フアイア製品(付属のスプーン1杯)は同量を継続し経過観察としました。100病日にプレドニゾロンの副作用により多飲多尿が重度で飼い主が他の治療法を模索したいとのことでシクロスポリン(5mg/kg)1日一回に変更するが、シクロスポリンを内服すると軟便が発生するとの事でシクロスポリンを3回投与したところで休薬しました。114病日、便の形状は正常で一般状態は問題なく超音波検査でも異常は認められませんでした。
160病日経過の段階で、リンパ球形質細胞性腸炎の治療はプレドニゾロンの投薬なし、犬猫用フアイア製品(付属のスプーン1杯)のみ継続で約50日ほど経過していますが軟便にならず良好な状態を保っています。
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▼血液検査結果
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考察と感想
慢性腸症の病態はいまだ不明な点が多いですが、慢性腸症は腸粘膜の異常な免疫応答が関わっていると考えられています。本症例はプレドニゾロンを休薬して約50日ほど経過していますが、犬猫用フアイア製品により免疫力を調節することにより難治性であった慢性腸症をおさえていると考えられました。したがって腸粘膜の異常な免疫応答を犬猫用フアイア製品にてコントロールできるものと考えられました。今後も経過観察とともに慢性腸症に罹患している症例に積極的に使用していきたいと思います。
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本症例に対する見解
麻布大学獣医学部 内科学研究室 教授 久末 正晴
犬の慢性腸症は、食餌反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、および 免疫抑制反応性腸症の3つの病態があります。本症例はリンパ球形質細胞性胃腸炎と診断されていますが臨床経過から免疫抑制反応性腸症であると考えられ、一般的には低脂肪食に加えプレドニゾロンが使用されます。その他シクロスポリンや間葉系幹細胞投与が有効であることが学術誌で報告されています。 免疫抑制反応性腸症はしばしば治療抵抗性であり、かつリンパ腫に移行する例も多く存在し獣医療では問題になっている疾患です。本報告でフアイア糖鎖TPG-1が有効であったことは今後治療の選択肢が増えるばかりでなくリンパ腫への移行を防ぐ上で有効な治療法の一つとなる可能性があります。多くの犬が本症で苦しんでいることもあり、早期に症例数を増やし臨床研究を推進しその有効性と作用メカニズムの解析が必要だと考えています。
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麻布大学獣医学部研究:ステロイドの副作用で苦しむ犬猫を救う新たな治療法開発へ!
URL: https://camp-fire.jp/projects/view/745505
プロジェクトの詳細
タイトル
麻布大学獣医学部研究:ステロイドの副作用で苦しむ犬猫を救う新たな治療法開発へ!
プロジェクトの概要
麻布大学にてご協力いただける被験者を募集し、フアイア抽出糖鎖TPG-1を10〜30頭の犬猫に投与し、その血液を採取しながら、数ヶ月間にわたり経過観察を行います。
具体的には、IL1やIL6の発現解析やTregの解析などを行い、新たな治療法として確立することを目指します。
期間
2024年4月8日(月) 08:00~6月22日(土) 23:00
第一目標金額
300万円(最大900万円)
第1ゴール 目標金額:300万円
第2ゴール 目標金額:600万円
第2ゴール 目標金額:900万円
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